放デイの支給量、10日と23日で比べてみました②「"10日でヨシ"に根拠なし」

「放デイの支給量、10日と23日で比べてみました」の第2回目です。この件については書き始めると止まりませんので、数回に分けてお送りいたします。前回は、品川区の「放課後等デイサービスの最大支給量10日」の問題を、特別支援学校在学児童をもつ働く親の視点から取り上げました。今回は、障害児の親ではなく、障害児本人の発達支援の側面から見てみましょう。

はじめに、放課後等デイサービスの基本的役割について触れておきます。厚労省の「放課後等デイサービスガイドライン」によると、放デイは「学校(幼稚園及び大学を除く。以下同じ。)に就学している障害児に、授業の終了後又は休業日に、生活能力の向上のために必要な訓練、社会との交流の促進その他の便宜を供与し」、「障害のある子どもに対して、学校や家庭とは異なる時間、空間、人、体験等を通じて、個々の子どもの状況に応じた発達支援を行うことにより、子どもの最善の利益の保障健全な育成を図るもの」とあります。簡潔に言うと、「障害のある学齢期の子どもの健全な育成を図る」ものだと言えるでしょう。(「IQ50の子をIQ70にしろ」とか、そういうものではありません。)

ここに、特別支援学校の小学部に通う生徒がいるとします。小学校の低学年のうちは下校時間が早いため、放課後等デイサービスである程度まとまった時間を過ごします(14時半~17時頃まで)。ところが、高学年になると下校の時間が遅くなるので、それにつれて放デイの事業所に到着する時間も遅くなり、そこで過ごす時間も短くなります(16時~17時頃まで)。これについては、どの区在住のお子さんであっても同様です。違いが生じるのは、放デイに通う頻度です。「放デイの支給量、10日と23日で比べてみました①」で、品川区在住の障害児の場合、放デイの最大支給量が10日なので、主に週2日の利用になると書きました。1日1時間で週2日しか来ない品川区在住の障害児の場合、放デイで過ごす時間が量的に少ないことに加え、「次来るまでに間が空く」という継続支援の難しさがあります。それに対し、放デイの最大支給量が23日以上の他区在住のお子さんは、1回1時間であっても毎日継続して週5日通うことができるのです。実際に、品川区内の放デイの事業所でも「品川区在住のお子さんは週2日程度しか来られず、毎日来られる大田区のお子さんに比べて継続した支援が難しい」という声を耳にしています。

健常児の場合、週2日塾に通うのと週5日通うのでは、学力にそれなりの差が出るはずです。スポーツや芸術系の習い事でたとえても同様です(もちろん本人が真面目に取り組むことが前提です)。では、障害児の場合は違うのでしょうか? 週2日放デイに通っても、週5日放デイに通っても、厚労省がガイドラインで言うところの「健全な育成」の面で差は生じないのでしょうか? 私はもちろん児童発達の専門家ではありませんが、健常児であれ障害児であれ、「継続は力なり」なことに変わりはないと思います。障害児の親として、日々「継続は力なり」だなと痛感しているからです。うちの子のような障害児は、ひとつのことを習得するのに非常に時間がかかるため、繰り返し繰り返し何度も教える必要があります。着替えから排泄、食事、その他学習面(時計を読む、など)にいたるまでのあらゆる事項において、日々の辛抱強い訓練が必須なのです。

ところが品川区は「療育は学校で充分行われるものなので、放課後等デイサービスの最大支給量は月10日でOK」という独自解釈を取っています。それは「障害児は週2日療育を受けても、週5日療育を受けても発達に差が出ない」ということ、つまり「障害児の発達は週2日の療育で頭打ちになり、それ以上受けても変わらない」という考え方によるのでしょうか? そうならそうで、障害児の療育日数と発達の関係を調べた大規模調査や論文など、それを証明するに充分な科学的根拠を出していただきたいと思います。щ(゚д゚щ)カモーン

なお、東京23区の他区の多くで、放課後等デイサービスの最大支給量を23日としているのには理由があります。厚労省の「障害児通所支援の質の向上及び障害児通所給付費等の通所給付決定に係る留意事項について」という通知で、「支給量は、通所給付決定を行おうとする者の勘案事項を踏まえて、適切な一月当たりの利用必要日数を定めることとしているが、原則として、各月の日数から8日を控除した日数(以下「原則の日数」という。)を上限とすることただし、障害児の状態等に鑑み、市町村が必要と判断した場合には、原則の日数を超えて利用することができるものとする(以下略)と書かれています。この「各月の日数」(最大31日)から「8日を控除」して23日という基準を導き出しているのです。最大支給量をその23日としている区では、「発達支援の機会をなるべく多く与えるため、ガイドラインで上限とされている23日を採用する」という考えなのだろうと思います。同時に「"月○日で充分"という科学的根拠がないからこそ、念のため上限まで出しておく」という思いもあるのではないかと想像します。実際に、同じお子さんで、同じ期間、放デイに月10日通った場合と月23日通った場合の発達の度合を比べることは不可能ですし、本来「どの障害児であっても発達支援は月○日で頭打ちになる」など一概に言えるはずがありません。すべてのお子さんが、発達支援の機会が多ければ多いほど発達の伸びが見込めるとは私も思いませんが、機会が多いほど伸びるお子さんは一定数いるでしょうし、今は放デイにマッチしなくても、通っているうちに結果が出てくるお子さんだっているはずです。その障害児一人ひとりに対して、放デイに実際通うべき日数を行政が個別に正しく見極めることは困難です。判断できる人がいるとすれば、それはいちばん障害児に接する時間の長い保護者だと思います(主治医という見方もあります)。親が放デイに通う我が子の日々の様子を観察し、「放デイのおかげで良い方向に向かっている」と思うのなら多く通わせればいいし、「放デイよりも家にいて、自分が教えたほうがよい」や「多く通わせると疲れてしまう」また「ストレスになる」と思うのなら日数は少なくていいはずです。その加減を親が(あるいは障害児本人が)自由に選択できることが大事なのです。その面から見ても、「支給量はガイドラインの上限に設定し、あとはそれぞれの家庭の判断にゆだねる」という考え方は一理あります。ところが品川区在住の障害児の場合、放デイでの発達支援がどんなにマッチしているお子さんであっても、最大で月10日しか通うことができないのです。

品川区にお尋ねします。「最大支給量は10日でOK」の判断に科学的根拠はありますか? 最大支給量が他区の半分以下の10日なのは、品川区の障害児が他区の障害児に比べてとりわけ賢いからですか? また、「生活能力の向上のために必要な訓練」を行なう場に通う日数が制限されていることで、品川区の障害児が発達の機会を失う可能性がないと言い切れますか? 「最大支給量23日」の他区の障害児に対して、品川区在住の障害児が発達の面で遅れをとる可能性はゼロですか? 「最大支給量10日」の施策で、放課後等デイサービスガイドラインで言うところの「子どもの最善の利益の保障」ができていると言えますか? この質問の中にひとつでもNOがあるなら、品川区は考えを改めるべきだと思います。自分たちの勝手な独自解釈によって、品川区在住の障害児の発達の機会を奪うのは即刻やめてください。

長くなりますので、また次回に続きます。